「Apple Payで高額な支払いが行われました」
このような身に覚えのないApple Payの利用を知らせ、不正利用を確認するためとして電話をかけさせるフィッシング詐欺が確認されています。
今回の手口で特に注意したいのが、偽メールから直接パスワードを入力させるだけではなく、被害者自身に偽のサポート窓口へ電話をかけさせる点です。
電話の相手はAppleのサポート担当者などを装い、本人確認や不正利用の防止を口実に、アカウント情報やセキュリティコード、カード・銀行関連の情報などを聞き出そうとします。
身に覚えのないApple Payの請求通知が届いても、慌ててメールなどに記載された電話番号へ連絡してはいけません。
本記事では、今回確認されたApple Payを装うフィッシングの手口や見分け方、不審な通知が届いた場合の対処法について解説します。
▼この記事でわかること
- Apple Payの偽課金から電話へ誘導する詐欺の手口
- なぜ詐欺師は被害者から電話をかけさせるのか
- 偽Appleサポートが狙っている情報
- Appleを装った詐欺を見分けるポイント
- 身に覚えのないApple Pay通知が届いた場合の対処法
- 電話や情報提供をしてしまった場合の対処法
- 日本のApple Payユーザーも注意した方がよい理由
▼この記事の結論
今回の詐欺では、Apple Payで身に覚えのない高額決済が発生したと思わせ、偽のAppleサポート窓口へ電話をかけるよう誘導します。
重要なのは、メールやSMSなどに書かれた電話番号へそのまま電話しないことです。
本当にAppleやカード会社への確認が必要な場合は、届いたメッセージに記載された連絡先を使わず、Apple公式サイトやカード発行会社の公式アプリ・公式サイトなど、自分で確認した正規の窓口から問い合わせましょう。
Apple Payの偽課金から電話へ誘導するフィッシングに注意
2026年、Apple Payの不正利用を装ったフィッシングキャンペーンが報告されています。
確認された手口では、Appleから送られたように見えるメールで、高額なApple Pay決済が発生した、あるいは不審な決済をブロックしたなどと通知します。
しかし、本当の目的はApple Payの決済について知らせることではありません。
受信者を不安にさせ、偽のAppleサポートへ電話をかけさせることが狙いです。

▲偽Apple Pay課金から偽サポートへ誘導する詐欺のイメージ。
身に覚えのない請求が届いても、記載された電話番号へ直接連絡しないよう注意してください。
「Apple Payで高額な支払いがあった」と偽通知
今回報告されているフィッシングでは、Appleらしいデザインを使ったメールによって、Apple Payで高額な取引が発生したと思わせます。
報告された事例では、ケースIDや日時などを記載したり、「アカウントが危険な状態にある」などと警告したりすることで、本物の不正利用通知であるかのように見せています。
さらに、偽のApple Gift Card購入やApple製品の購入を請求内容として表示した例も確認されています。
「こんな買い物はしていない」
と思ったユーザーが慌てて問い合わせる心理を利用した手口です。
本当の目的は「記載された電話番号」へ電話させること
今回の詐欺で最も重要なポイントです。
メールに表示されているApple Payの請求は、被害者を慌てさせるための「きっかけ」にすぎません。
メッセージには、
「身に覚えがない場合はこちらへ連絡してください」
「不正利用を確認するためサポートへ電話してください」
といった形で電話番号が記載されます。
しかし、その番号へ電話すると、本物のAppleではなく詐欺師につながる可能性があります。
つまり、
偽のApple Pay課金
↓
ユーザーを不安にさせる
↓
偽サポートへ電話させる
↓
個人情報・決済情報などを聞き出す
というのが基本的な流れです。
今回のApple Pay詐欺の流れ
今回報告されている手口を整理すると、次のようになります。

① 身に覚えのないApple Pay課金を通知
最初にAppleを装ったメールなどを送り、身に覚えのないApple Pay決済が発生したと思わせます。
高額な商品やギフトカードなど、受信者が「すぐに止めなければ」と感じやすい請求内容が利用される場合があります。
② 「不正利用なら電話してください」と誘導
次に、取引について確認するための電話番号を提示します。
ここで重要なのは、ユーザー自身から電話をかけさせることです。
知らない番号から突然電話がかかってくれば警戒する人でも、「自分からAppleサポートへ電話した」と思えば相手を信用してしまう可能性があります。
③ 偽Appleサポートにつながる
電話をかけると、Appleの請求・不正利用対策部門などを装った人物につながります。
実際に報告されたキャンペーンでは、「Apple Billing & Fraud Prevention」を装ったケースが確認されています。
④ 本人確認などを理由に情報を聞き出す
詐欺師は、
「本人確認が必要です」
「カードを一時的に保護します」
「アカウントを確認します」
などと説明しながら、情報を聞き出そうとします。
ここまで進むと、ユーザー側は「Appleに不正利用を調べてもらっている」と思い込んでしまう可能性があります。
⑤ アカウントやカードの不正利用につながる恐れ
取得された情報によっては、アカウントへの不正アクセスや決済情報の悪用などにつながる恐れがあります。
「Apple Payの不正利用を防ぐために電話したはずなのに、その電話によって情報を盗まれてしまう」という非常に悪質な仕組みです。
偽Appleサポートは何を聞き出そうとする?
Appleを装った詐欺では、さまざまな個人情報やセキュリティ情報が狙われます。

Apple Account関連の情報
特に注意したいのがApple Accountです。
Appleは公式に、Apple Accountのパスワードや確認コードを他人へ教えないよう案内しています。
また、Appleがサポートを行う際にApple Accountのパスワードや確認コードを尋ねることはないとしています。
そのため、
「本人確認のためパスワードを教えてください」
「iPhoneに届いた確認コードを読み上げてください」
などと言われた場合は、非常に危険なサインです。
クレジットカード・銀行関連の情報
今回報告されたキャンペーンでは、電話で銀行口座やApple Payに登録されているカードについて質問し、「一時的に決済方法を保護する」などと説明する手口が確認されています。
「不正利用を止めるため」
「返金するため」
といった理由を付けられても、安易にカード番号やセキュリティ情報などを伝えてはいけません。
住所・電話番号などの個人情報
名前、住所、電話番号、メールアドレスなども注意が必要です。
さらに厄介なのが、詐欺師側がすでに被害者に関する一部の情報を知っているケースです。
Appleも、ソーシャルエンジニアリング攻撃では、攻撃者が個人情報を利用して信用させようとする場合があると注意を呼びかけています。
「自分の情報を知っている=本物のApple」
とは限りません。
ワンタイムパスワード・確認コードは絶対に教えない
特に重要なのが確認コードです。
確認コードは、アカウントを守るための「最後の鍵」になる場合があります。
電話の相手がどれだけ本物のサポート担当者らしくても、
Apple Accountのパスワード・デバイスのパスコード・2ファクタ認証コードなどを伝えない
ことが重要です。
なぜこのApple Pay詐欺は騙されやすい?
今回の手口には、人間の心理を巧みに利用したソーシャルエンジニアリングの特徴があります。
「身に覚えのない高額請求」で焦らせる
突然、
「高額なApple Pay決済が行われました」
という通知が届けば、多くの人は不安になります。
「カードを不正利用されたのでは?」
「早くキャンセルしなければ」
と焦らせ、冷静にメールの真偽を確認する時間を奪うことが狙いです。
「今すぐ連絡してください」と時間を与えない
詐欺では「緊急性」が頻繁に利用されます。
Appleも、ソーシャルエンジニアリング攻撃では、ユーザーが考えたりAppleへ直接問い合わせたりする時間を与えないため、強い切迫感を作り出す場合があると説明しています。
「すぐに対応しなければ被害が出る」
と思っても、そこでメール記載の番号へ電話しないことが重要です。
「Apple」という有名企業への信用を悪用
AppleやApple Payを日常的に利用しているユーザーほど、AppleのロゴやApple製品名が記載されたメールを信用してしまう可能性があります。
しかし、ロゴやそれらしいデザイン、ケース番号などは本物である証明にはなりません。
「見た目がAppleらしいから大丈夫」と判断しないよう注意してください。
Apple Payの不正利用通知が届いたらどうする?
では、実際に身に覚えのないApple Pay関連の通知が届いた場合はどうすればよいのでしょうか。

通知に記載された電話番号へ電話しない
まず最も重要なのは、
メールやSMSなどに記載された電話番号へ、そのまま電話しないこと
です。
今回の詐欺では、この電話こそが攻撃の入口となります。
メール・SMS内のリンクも安易に開かない
電話番号だけでなく、メッセージ内に記載されたリンクにも注意してください。
Appleは、心当たりのない不審なメッセージを受信した場合、本文中のリンクをクリックしたり、添付ファイルを開いたり保存したりしないよう案内しています。
Apple公式サイト・公式サポートから確認する
本当にApple AccountやAppleのサービスに問題があるのか心配な場合は、メール内の連絡先ではなく、Appleの公式サポートから確認しましょう。
Appleも、Appleを名乗る不審な電話やメッセージには応答せず、公式サポートチャネルからAppleへ直接問い合わせるよう案内しています。
Appleでは、フィッシングメールや偽のサポート電話などを見分ける方法や、不審な連絡を受けた場合の対処方法を公式サイトで案内しています。
心当たりのないApple関連の連絡を受け取った場合は、あわせて確認しておくことをおすすめします。
参考:Apple公式|フィッシングメッセージ、偽のサポート電話、その他の詐欺への対処方法
カードの利用状況はカード発行会社から確認
Apple Payに登録しているカードの不正利用が心配な場合は、カード発行会社側の利用履歴も確認しましょう。
この場合も、届いたメールやSMSに記載された連絡先ではなく、
- カード会社の公式アプリ
- カード裏面など正規の方法で確認した連絡先
- カード会社の公式サイト
などから確認することが重要です。
電話をかけてしまった場合は?
間違って記載された番号へ電話してしまった場合でも、電話しただけで直ちにアカウントが乗っ取られたとは限りません。
重要なのは「何を相手に伝えたか」です。
電話しただけなら情報を伝えず切る
不審だと気付いた時点で通話を終了してください。
相手から再度電話がかかってきても応答せず、必要であればAppleやカード発行会社の公式窓口へ自分から確認します。
Apple Account情報を伝えてしまった場合
Apple Accountのパスワードなどを伝えたり、不審なWebサイトへ入力したりした場合は早急な対応が必要です。
Appleは、Apple Accountが侵害されたと思われる場合や、詐欺サイトへパスワードなどを入力した可能性がある場合、ただちにApple Accountのパスワードを変更し、2ファクタ認証が有効になっていることを確認するよう案内しています。
また、Apple Accountに登録されている情報や信頼できるデバイスに見覚えのない変更がないか確認しておきましょう。
カード情報を伝えてしまった場合
クレジットカードなどの情報を伝えてしまった場合は、速やかにカード発行会社へ相談してください。
カードの利用停止や再発行などが必要になる可能性があります。
この場合も、偽メールに記載された番号ではなく、カード会社の公式窓口を利用してください。
確認コードを伝えてしまった場合
2ファクタ認証の確認コードなどを伝えてしまった場合も注意が必要です。
Apple Accountへの不正アクセスが疑われる場合は、パスワードの変更やアカウント情報、信頼できるデバイスの確認などを速やかに行いましょう。
Apple Pay自体のセキュリティが破られたわけではない
今回の詐欺を知って、
「Apple Payは危険なの?」
と心配になった人もいるかもしれません。
しかし、今回報告されている手口は、Apple Payそのもののセキュリティを突破して情報を盗み出す攻撃とは異なります。
Appleによると、Apple Payへ追加されたクレジットカード、デビットカード、プリペイドカードの元のカード番号をAppleが保管することはありません。
決済時にも、実際のカード番号をそのまま使うのではなく、デバイス固有の情報などを利用して取引を保護する仕組みになっています。
今回狙われているのはApple Payの決済システムそのものではなく、
「Apple Payで不正利用された」と人間を騙し、自ら情報を渡させること
です。
つまり、技術的にApple Payを破るのではなく、人間の不安やAppleブランドへの信用を狙ったソーシャルエンジニアリング型の攻撃と考えた方が分かりやすいでしょう。
Apple Payでカード情報がどのように保護されているのかについては、Appleがセキュリティとプライバシーの仕組みを公式サイトで詳しく解説しています。
今回の詐欺とApple Pay自体のセキュリティを混同しないためにも、気になる方は確認してみてください。
参考:Apple公式|Apple Payのセキュリティとプライバシーの概要
日本のApple Payユーザーも注意が必要?
今回報告されている具体的なフィッシングキャンペーンは英語によるものですが、日本のユーザーも手口を知っておいた方がよいでしょう。
今回の方法は、
「身に覚えのないApple Pay決済を通知する」
「問い合わせ先として電話番号を表示する」
「Appleサポートを装って情報を聞き出す」
というものであり、言語を変更すれば同様の手口を日本向けに応用することも可能です。
そのため、現時点で日本語による同一キャンペーンが広く確認されていないとしても、「日本語ではないから日本では関係ない」と考えるのはおすすめできません。
日本でも「Apple Payで身に覚えのない請求が発生した」などのメールやSMSが届いた場合は、記載された電話番号へ直接連絡せず、Appleやカード発行会社の公式窓口から確認するようにしてください。
前回の「盗難iPhone+AI音声フィッシング」との違い
以前紹介した、盗難iPhoneの持ち主を狙ったAI音声フィッシングとは、攻撃の入口や狙われる情報に違いがあります。
| 比較項目 | 盗難iPhone+AI音声フィッシング | 今回のApple Pay詐欺 |
|---|---|---|
| きっかけ | iPhoneの盗難・紛失 | 偽のApple Pay課金 |
| 主な接触方法 | AI音声による電話など | 偽メールなど→電話 |
| なりすまし | Appleなど | Appleサポートなど |
| 主な狙い | デバイスのパスコードなど | アカウント・決済関連情報など |
| 心理的な仕掛け | 「端末を取り戻したい」 | 「不正請求を止めたい」 |
| 共通点 | Appleへの信用と緊急性を悪用 | Appleへの信用と緊急性を悪用 |
前回の手口では「盗まれたiPhoneを取り戻したい」という心理が悪用されました。
一方、今回は「身に覚えのない高額請求を止めたい」という心理が悪用されます。
入口は異なりますが、どちらもユーザーを不安にさせ、Appleなど信頼できる相手を装って重要な情報を聞き出すという点は共通しています。
盗難・紛失したiPhoneの持ち主にAI音声電話をかけ、パスコードを聞き出そうとする別のフィッシング手口も確認されています。詳しくは以下の記事で解説しています。

Appleを装った詐欺を見分けるチェックリスト
AppleやApple Payを名乗る連絡が届いた場合は、次のポイントを確認してください。
- 身に覚えのないApple Pay決済を突然通知された
- 「今すぐ対応してください」と強く急かされる
- メールやSMSに問い合わせ用の電話番号が書かれている
- Apple Accountのパスワードを聞かれる
- 2ファクタ認証の確認コードを聞かれる
- デバイスのパスコードを聞かれる
- カードや銀行関連の重要情報を要求される
- 「不正利用防止」「返金」「本人確認」などを理由に情報提供を求められる
- メール内のリンクからサインインするよう求められる
特に、Appleはサポート時にApple Accountのパスワードや確認コードを尋ねることはないと明記しています。
1つでも不審に感じる点があれば、そこでやり取りを中止してください。
そして、メールや電話の相手が提示した連絡先ではなく、自分で確認したAppleやカード会社の公式窓口から問い合わせましょう。
よくある質問(FAQ)
Apple Payから身に覚えのない請求通知が届いたら詐欺ですか?
必ずしもすべてが詐欺とは限りません。
ただし、身に覚えのない請求を理由にメールやSMSに記載された電話番号へ連絡するよう求められた場合は注意が必要です。
その連絡先を利用せず、Appleやカード発行会社の公式窓口から事実を確認してください。
Appleから電話がかかってくることはありますか?
Appleを装った詐欺電話が存在するため、「Appleと表示されている」「Appleを名乗った」という理由だけで信用してはいけません。
Appleも、AppleやAppleサポートを名乗る身に覚えのない電話があった場合は電話を切るよう案内しています。
Appleサポートはパスワードや確認コードを聞きますか?
Appleは、サポート時にApple Accountのパスワードや確認コードを尋ねることはないとしています。
パスワードや2ファクタ認証コード、デバイスのパスコードなどを要求された場合は伝えないでください。
電話番号に電話しただけでも危険ですか?
電話しただけで直ちにApple Accountが乗っ取られるとは限りません。
ただし、その後の会話で個人情報やパスワード、確認コード、決済関連情報などを伝えないことが重要です。
不審だと気付いたら通話を終了してください。
カード番号を伝えてしまった場合はどうすればいいですか?
速やかにカード発行会社の公式窓口へ連絡し、状況を説明してください。
必要に応じて利用停止やカード再発行などの対応を相談しましょう。
Apple Payを利用していなくても偽通知が届くことはありますか?
可能性はあります。
フィッシングメールは実際のApple Pay利用状況を把握せず、不特定多数へ送信される場合も考えられます。
Apple Payを使っていないのに「Apple Payで高額決済が発生した」という連絡が届いた場合も、メール記載の電話番号やリンクを利用しないようにしてください。
日本でも同様の詐欺に注意する必要がありますか?
今回報告された具体例は英語によるものですが、同様の手口が日本向けに応用される可能性を考えておく必要があります。
「Apple Payの不正利用」を理由に電話や個人情報の提供を求められた場合は、まず詐欺の可能性を疑い、公式窓口から確認してください。
まとめ|「Apple Payで不正利用」に慌てて電話しない
Apple Payで身に覚えのない高額決済が発生したと思わせ、偽のAppleサポートへ電話させるフィッシング詐欺が確認されています。
今回の手口で覚えておきたいのは、
「偽の請求通知そのものが最終目的ではなく、電話をかけさせるためのきっかけとして使われている」
という点です。
「Apple Payで不正利用されています」
「すぐにAppleサポートへ電話してください」
といった連絡が届いても、慌てて記載された電話番号へ連絡してはいけません。
本当に不正利用が心配な場合は、Appleの公式サポートやカード発行会社の公式アプリ・公式サイトなど、自分で確認した正規の窓口から問い合わせましょう。
また、Apple Accountのパスワードや2ファクタ認証コード、デバイスのパスコードなどを電話の相手へ伝えないことも重要です。
AppleやApple Payの知名度・信用度が高いからこそ、それを悪用した詐欺も本物らしく見えてしまいます。
「身に覚えのない請求+今すぐ電話」
という組み合わせを見たら、一度やり取りを止めて、本当にAppleやカード会社からの連絡なのかを確認するようにしてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!



